| 私がテニスをはじめたのは12歳の頃で中学時代5年、一橋高商時代4年、併せて9年、更に21歳の時、印度カルカッタ三井物産に赴任して硬式テニスに入ってから今日迄実に48年間併せて57年が、60年になんなんとするテニス生活である。私は高商時代、当時財界の偉人渋沢栄一先生から論語の士魂商才という言葉を学んだ。この士魂商才が自分の一生を通じての座右の銘であり又60年間テニスを通じて精神的に鍛錬した一つの偉大な収穫である。
今自分はテニスという一種のスポーツを通じて今日迄精進した士魂という精神を四つのconを頭に持った言葉を以て説明する。 四コンのまず第一はconcentration
精神統一という言葉である。換言すれば精神の集中である。飽く迄も球に精神を集中して一生懸命、努力する。第二のコンはcontrol 球をうまくコントロールする意味と同時に自分の我儘我欲という様な情操的精神状態をも、うまくコントロールする。第三のコンはcombination
即ち協力一致という事である。他の言葉で言えばチームワーク、テニスのダブルスならば前後衛の協力又シングルスならばネットプレーとベースラインプレー等をうまくコンバインする事である。今、仮にこの3つのコン即ちコンセントレーション、コントロール、コンビネーションの三者を完全に体得したとしても今一つのコン無くしては所謂、仏作って魂入れずという事となる。果たして然らば其のコンとは何を意味するか。それはconfidence
自分のテニスに全幅の自信、確信を持つ事である。所謂自分の信ずる所に向かって進む場合には百万の敵といえども吾れ行かんという様な強い確信と信念を持つ。
此の四コンを充分完全に体得するに至らばテニスは申す迄もなく如何なる方向に向かって進むとも必ずや真に立派な大成をするものである事を自分は深く信じて疑わないものである。
【内田注】士魂商才:武士の精神と商人の才とを兼備すること。 (昭和35年7月『部報』第三号)
2001/6/12 |